ワンルームからそこまで

よわいオタクの生産性のない壁打ち

オタク、記憶をなくす。

某舞台俳優のファンになって一年半が経った。

3ヶ月後のチケットを購入して、楽しみで待ちきれないなんて思ってたら、気づくと公演も初日を迎えいつのまにか千秋楽…

その繰り返しで本当にあっという間に時が経ってしまった。

オタクじゃなかった頃と比べると時間の流れが倍速ほどに感じる。

 

オタクになってから時に喜び、時に病み、かなりの頻度で「沸く」ため、毎日が充実しているのは言うまでもないが、

それと引き換えに私は色々なものをなくしてきた。

例えば少ないながらもコツコツ貯めてきた貯金。そしてなにより

オタクになる前の自分

である。

 

 

 

一年半前の自分はかなり平凡な人生を送っていたと思う。

サークルで旅行に行ったり、少女漫画原作の似たような恋愛映画見たり、いろんな飲み会に参加したりしていた。

今やそんな普通の女子大生だった私はもういない。死んだ。いや、殺した。

バイトが忙しいとサークルも辞め(ある意味嘘はついてない)、興味のない映画には極力付き合わず、飲み会は同類のオタク集会にのみ参加する。

かなりシンプルで、それでいて濃い行動様式へと変化を遂げたのである。

 

そして正直、オタクになる前は何をしていたのか、何をモチベーションにしていたのかあまり覚えていない。

人間は不必要なものから忘れてしまうと言うが、今の私にとってオタクになる前の事や、いわゆる“普通の感覚”は不必要なものだったらしい。

 

推しと仲のいい俳優や共演者の顔と名前は把握しているのに、高校の同窓会では4/5が知らない人だった(そんなはずはない)。

通った劇場の座席表と座った番号は頭に入っているのに、ついに実家の電話番号まで曖昧になってきた。

以前は月2回の3000円の飲み会でさえ渋っていた気がするのに、今や9000円のチケットを数十枚単位で購入してしまう。

 

いっそ生まれ変わったと言われた方が納得できる。これまでが前世で、今はあなた生まれたてのオタクなのよって。

 

なんにせよ、今が余りにも充実しているせいかオタクになる前の記憶がなくなってきているのは確かだ。

ここまで来てしまうともう戻ることができないような、そんな気がしてならない。

 

ポ◯モンだって進化したら、戻れない。

私は進化キャンセルの選択肢もあったのに、Bボタンを押すどころか自分から進化を望んでしまったのだ。

今のところオタクになったことを後悔なんてしていないけれど、子供の頃に可愛いからという理由で選んだフシギダネが最終的にフシギバナという最高にクールな生き物になってしまったことを思い出しながら、これ以上の進化を心のどこかで恐れている。